上流から流れてきた桃を食べて老夫婦

上流から流れてきた桃を食べて老夫婦が若返ったというくだりには、道教やさまざまな神話が影響していると見られる。『山海経』や西王母伝説、或るいは日本神話のイザナギの神産み黄泉の国に見られるように、桃は邪気を祓い不老不死の力を与える霊薬である果実とされている。また、山奥に住む仙人にも桃は欠かせない存在である。桃太郎を齎した桃は、こうした力のある桃が山から流れて来たものとも考えられる。世界的には霊力のある植物は桃とは限らず、古くはギルガメシュ叙事詩での不死の薬草、旧約聖書の『創世記』における生命の樹と知恵の樹、田道間守の非時香菓(ときじくのかぐのこのみ、橘の実とされる)や徐福伝説の神仙薬などが挙げられる。桃太郎の対的説話としては瓜から生まれた瓜子姫が指摘され、沖縄県久高島には黄金の瓜から生まれた男子が後の琉球王(西威王とされる)となったという伝説のバリエーションもある。桃太郎の深層に対して最初に学問的なメスを入れたのは民俗学者・柳田國男である。昔話に日本の固有信仰の姿を発見することにあった。
update:2009年08月24日